なぜ炭素だけ特別なの?炭素を含む物質だけが「有機物」になれる理由

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せろりんです。世の中の物質はザッと有機物と無機物に分けることができます。そんで、分子に炭素を含む物質は、二酸化炭素等のごく一部の物質を除いて「有機物」に分類されます。

なんで炭素だけが特別なんでしょうか?窒素や酸素やアルミではダメだったんでしょうか?

冷静に考えると、元素って120種類くらいあるのに「炭素を含む」「炭素を含まない」でジャンル分けをしちゃうのってヤバいですよね。他の119個には無い特別な何かが炭素にはあるわけです。

もちろん、世の中の物質を有機物と無機物で分けるのは、有機物と無機物で性質が大きく変わるからです。じゃあなんで炭素を含む物質は、無機物と性質が全然違うんでしょうか?

どうでもいいっちゃどうでもいいですが、謎っちゃ謎ですよね。炭素を含む物質はなぜ有機物と呼ばれるんでしょうか。理由を解説します。中学2年生くらいならギリ理解できるくらいの難度で解説しているつもりです。

有機ってなんだ

「有機物は炭素を含む物質、ただし二酸化炭素や黒鉛みたいなシンプルなやつは除く」という有名な定義は一旦置いといて、有機物とはなんなのかについて考えましょう。

有機物ってのはもちろん有機的な物質のことです。じゃあ有機ってなんでしょう。辞書をひくと「生命を持つこと」「生命力を有すること」なんて書いてあります。はい終わり。

このことから、有機物ってのは生物に関係した物質のことだということがわかります。もうちょい詳細に言うと、生物を構成する物質だとか、生物が作り出す物質のことです。

もちろんこれは化学における厳密な定義ではありませんが、元の意味から考えると、有機物とは生命が作る物質のことです。昔は、有機物は生き物にしか作れない、と考えられていましたが、今では有機物は無機物から合成できることがわかっています。

生物を構成するからには、それなりに複雑な物質である必要があります。何を恥ずかしがることがあろうか、我々は分子で出来た超精密な機械です。大量の情報が書き込まれたDNAだって一つの分子です。分子でできた機械が大量に集まって出来たのが細胞で、細胞が37兆個くらい集まってできたのがおれたち人間です。分子で機械をつくるからには、その分子は複雑な構造を持っている必要があります。シンプルな分子ではミクロな機械は絶対に作れません。

ところがどっこい、地球上で複雑な分子を作ることができる原子というのは、この世で炭素原子だけなのです。なんで炭素原子だけが複雑な構造を作ることができるんでしょうか。理由は3つくらいあります(実際はもっとあります)。以下の3つを全て満たす元素だけが有機的な構造を作ることが可能です。そして、その3つを満たす元素は宇宙で炭素だけです。

① 炭素は4つも結合を作れる

1つ目の理由です。これは高校で習うので有名です。元素はそれぞれ結合を作れる数というのが決まっています。たとえば酸素は2個、窒素は3個の結合しか作ることが出来ません。どっこい炭素は4つもの結合を作ることができます。まあ炭素でできた物質を見てみましょう。

メタン CH4です。1個の炭素原子 Cに4個の水素 Hが結合しているシンプルな物質です。CとHの間にある線は、線で結ばれている原子が結合していることを表しています。このことから、炭素は結合を4本も持てるということと、水素は1個しか結合を持てないということがわかります。1個の原子としか結合を作れない水素じゃあ、なんかにひっつくのがせいぜいで、複雑な物質なんて絶対作れませんよね。

メタンは都市ガスの主成分ですね。ご家庭で契約するガスには都市ガスとプロパンガスがあります。家にガスコンロがあって、なおかつ家の庭に灰色のボンベが無いご家庭は都市ガスを契約しているはずです。うちは灰色のボンベがあるタイプのプロパンガスという奴で、プロパンという物質が主成分なんですが、くそったれなことにガス代が死ぬほど高いです。都市ガスの倍くらいします。一人暮らしなのに、冬はある程度節約して使ってもガス代が8000円くらい行きます。ファッキン。クソです。おれはほとんどシャワーしか使いませんが、風呂を沸かす人はうちの業者だと万を超えるかもしれません。まあうちが常軌を逸して高いというのもありますが、プロパンガスというのは基本的に値段が高いです。一人暮らしを始めるならできるだけ都市ガスの物件を選びましょう。都市でないところは都市ガスが通っていませんが、そういう場合は積極的にオール電化の家を選択しましょう。まあオール電化にはオール電化の苦悩があるのかもしれませんが、それにしてもプロパンガスは高すぎです。クソ。ただでさえ高いのにぼったくり業者というのも存在します。田舎にはぼったくり業者が多いです。何を隠そううちが契約しているのはぼったくり業者です。良心的な価格でプロパンを売ってる優良業者も無くはないみたいですが、賃貸契約をする前に、その物件がどういうガス会社と契約しているのかしっかり確認しておきましょう。プロパンガスの会社はそう簡単には変更できません。ガスが高いと金がかかるだけでなく毎月の支払いのときに憂鬱になるので良いことがありません。ガスごときをいちいちケチるようになって精神的によくありません。金銭的にも、1ヶ月だと数千円の差かもしれませんが、これが10年くらいになってくるとバイクが買えるくらい違います。引っ越すときにしっかり考えるのが重要です。

こいつがプロパンガスの主成分、プロパンです。まあ化合物に罪はありません。どの炭素も4本の結合を持っていることがわかると思います。

こいつはおなじみの二酸化炭素 CO2です。こういうパターンもあります。イコールみたいな二本線が炭素から2つ伸びていますが、こいつは二重結合という奴です。まあロープ2本でがっしり結合していると思っていただければ大体そんな感じです。

二重結合を2つ持っていることからも、炭素は結合のロープを4本伸ばせるということがわかります。また、酸素 Oは結合を2本しか伸ばせないということもわかります。2本じゃあ両隣とくっつくのが精一杯です。酸素だけでは直線的なヒモみたいな構造しか作れませんよね。酸素だけで複雑な構造を作るのはちょっと無理があります。

じゃあ炭素以外はどうなんでしょうか。地球上にたくさんある元素をみてみましょう。

こいつは空気中にたくさん含まれていることで有名な窒素 Nに水素 Hが3つ結合したアンモニア NH3です。窒素は結合が3本です。まあ3本だったらそこそこ複雑な物質が作れてもおかしくない気はしますよね。両隣と結合して骨格を作っても、まだ1箇所、何かが結合できる余地が残ります。網目みたいな構造だって作れちゃいそうな気がします。

しかも、同じく地球上にたくさんあるケイ素 Siは4本、リン Pは最大5本、硫黄 Sは最大6本も結合を作れるので、「4つの原子と結合できるから」という理由だけでは納得はできません。でもこいつらは②と③の理由を満たしません。

② 炭素は炭素と結合して骨格を作れる

炭素は炭素とかなりしっかりした結合を作ることができます。これは他の元素にはあまり見られない特徴です。たとえばさっきのプロパンは炭素が3個つながった物質です。

さらに、こいつは炭素が6個つながった物質です。ライターオイルとかガソリンに含まれるヘキサンという物質です。炭素が6個つながっていますが、基本的には結合が勝手に切れて別の物質に変化してしまうことはありません。これは炭素と炭素がすごくしっかりした結合をつくるためです。

ヘキサンには特別な性質は特にありません。あるとすれば「よく燃える」というくらいです。こういう、炭素が一重結合でつながって骨格を作り、余った結合の部分に水素がくっついた物質は「炭化水素」と呼ばれ、炭化水素のたぐいはたいてい「よく燃える」以外の特別な性質を持ちません。

ところがこいつは有機物を考える上で結構重要です。炭化水素は有機物の骨格になるからです。たいていの有機物は、炭化水素でできた骨格に特別な性質を持つ原子や分子がくっついた物質です。そういう物質が存在することができるのは、炭素が炭素と結合して骨格を作ることができるからです。

さらに、世の中には6個どころじゃなくもっとたくさん炭素がつながった物質があります。ヘキサンは炭素が6個つながった骨格を持つ炭化水素ですが、炭素が概ね1000個くらいつながった骨格を持つ炭化水素はポリエチレンと呼ばれ、タッパーの蓋なんかに使われます。

また、食用油は炭素が概ね16個くらいつながった物質が主成分です。このことからわかるように、炭素は炭素といくらでもつながることができます。

炭素と炭素の結合はかなりしっかりしているので、いくらでもつながって有機物の骨格になることができます。一方で、酸素や窒素、リン、硫黄なんかはこれができません。ケイ素もまったく無理ではないですが難しいです。

これが猛毒として知られる酸素 O2です。こいつはめちゃくちゃ結合が切れやすいです。事あるごとに結合がブチ切れて、周囲にあるいろんな物質と反応を起こしてしまう凶悪なやつです。鉄棒のサビも、宵越しのお茶がまずくなるのも、みんなコイツが原因です。大気中に2割ほど含まれます。

また、酸素が2個つながって余計な部分に水素がくっついた物質、過酸化水素 H2O2(H-O-O-H)も同様に酸素と酸素の結合がめっちゃ切れやすいです。過酸化水素は、酸素と酸素の結合が切れたときに周りの物質を破壊しまくるので、消毒剤や漂白剤に使われます。

酸素は2個つながっただけで結合がめっちゃブチ切れやすくなるくらい、自分と同じ元素と結合を作るのが苦手な元素です。


じゃあ酸素3個はどうか?というと、こいつはもっとヤバいです。酸素が3個つながった物質はオゾンと呼ばれます(原子の上に書いてあるプラスとかマイナスはなんやねんとか、酸素は結合2本のはずなのに1本だったり3本だったりするやんけと思うかもしれません。マイナスとかプラスは静電気みたいなやつのことで、静電気を持つ酸素は結合が1本だったり3本だったりします)

こいつは、本来猛毒である酸素 O2をうまいこと糧にして生きてるおれたち動物にすら毒です。毒性が強い理由は、酸素と酸素の結合が簡単に切れて、切り離された酸素が生き物の持つ物質に結合して物質を破壊しまくるからです。オゾンの結合はそのくらい簡単に切れます。ちなみに結合がブチ切れた酸素は活性酸素と言われ、老化の原因だと言われています。

この毒性をうまく利用して水道水の消毒に使っている浄水場もあるみたいです。そんで、オゾンは紫外線が当たると、紫外線を吸収すると同時に結合がブチ切れるという性質もあります。この性質のため、オゾン層は太陽から降り注ぐ紫外線を吸収することができます。

まあOが3つつながったオゾン O3までは一応存在しますが、酸素が4個つながったO4という物質は存在が確認されていません。酸素が4個つながった物質は結合が弱すぎて作れたとしても一瞬で分解してしまうためです。

この通り、炭素以外のたいていの元素は、同じ元素同士で結合を作ることが極めて困難です。他にも、窒素だけがいくつもつながった物質や、結合を5個とか6個作れる状態のリンや硫黄が複数つながった物質は無いっぽいです。

同じ元素だけでたくさんつながって骨格を作ることができて、なおかつ1つ目の理由を満たす元素は、おれが知る限り炭素とせいぜいケイ素くらいです。ケイ素は結合が4本なので①の理由を満たしますし、ケイ素とケイ素の結合をいくつか作ることも一応可能です。でも、ケイ素はケイ素以外の元素と結合を作ることが難しいので骨格として使うには無理がありますし、ケイ素とケイ素の結合を狙ったとおりに作ることは結構難しいですし、なにより次の理由を満たしません。

③ 炭素はしっかりした二重結合を作ることができる

さっきちょっと触れたように、炭素は二重結合をつくれます。二重結合ってのは、ざっくり言えばロープ2本でガッチリ結合している状態です。

おまけに三重結合なんてものも作れます。ロープ3本です。まあ三重結合はそこまで重要でもないんですが、二重結合は死ぬほど重要です。

二重結合を作れる元素は、窒素を始めとして、まあまあたくさんあります。あくまでも「しっかりとした」「切れにくい」二重結合を「同じ元素で」作れるのが炭素くらいしかないという話です。

こいつはご存知カフェインです。二重の結合がたくさんありますね。炭素 Cと酸素 Oや、炭素 Cと窒素 Nの二重結合だけでなく、炭素と炭素の二重結合も作っています。同じ元素で二重結合を作れる元素は結構少ないです。

炭素や窒素、酸素などの周期表の最初の方に登場する軽い元素は、比較的しっかりした多重結合を作ることができます。でも、ケイ素などの、原子1個の質量が重い元素は、しっかりした多重結合を作ることがわりと困難です。

そんじゃあ二重結合を作ることができると何が良いのでしょうか?

こいつはさっきのカフェインの立体構造です。灰色の球が炭素、青が窒素、赤が酸素、白が水素です。立体構造からわかるように、水素以外のすべての原子が、同じ平面上に存在していることがわかると思います。カフェインは平面的な分子なのです。これじゃよくわからないでしょうか?もうちょっと傾けて真横から見てみましょう。

真横から見るとこの通り、水素(白い球)以外は全部同じ平面に乗っていることがわかると思います。おれたちを眠れなくするカフェインは平面的な分子です。

なぜ平面になるか?というと、「二重結合を持つ炭素は同じ平面にしか結合を作れない」という性質があるからです。一方で、二重結合を持たない(一重結合しか持っていない)炭素はテトラポットのように3次元的な方向にしか結合を作れないので、一重結合だけでは平面的な分子を作ることができません。平面的な分子を作ることができないと、作れる構造にかなり制限が生じます。

こいつは、一重結合しか持っていない炭素から出来ている分子としては最もシンプルな、メタンCH4です。先程も登場しましたね。見ての通りテトラポットみたいに3次元的に結合を伸ばしています。この方向以外には基本的には結合を伸ばせません。1重結合だけでは平面的な分子を作ることはできないということがおわかりいただけるかと思います。

仮にカフェインの二重結合を全部一重結合に置き換えるとどうなるか?というと、こうなります。グッチャグチャですね。平面もクソもありません。炭素がテトラポットの足と同じ方向に立体的な結合をつくるため、平面とはかけ離れたグニャグニャの分子しか作れません。

こんなグニャグニャな形では、脳に作用して眠気を飛ばすことなんてできません。カフェイン分子は平面じゃなきゃ薬効がありませんし、カフェイン以外の栄養素や医薬品にも、平面だからこそ効果がある物質というのはたくさんあります。複雑な分子を作る上では、平面的な構造を作れるというのは重要です。

「平面的な構造を持つ」というのは、二重結合を持つ物質の特徴のわずか一例でしかありません。二重結合がもたらすスゴい性質は、ほかにもいくらでもあります。例えば、二重結合を持つ炭素は「共役系を作ることができる」とか、「芳香族になれる」とか、「回転の自由度が無い」とか、「反応性が比較的高い」とか、二重結合を含む分子しか持ちえない特徴はけっこうたくさんあります。

このへんはそこそこ勉強をしないと理解が難しいので説明しませんが、二重結合は、多彩な特徴を持つ複雑な分子を作る上で必須です。例えば共役系が作れないと我々は目が見えないし植物は光合成ができません。回転の自由度が制御できないと細胞膜の流動性が著しく低下します。

炭素が炭素と二重結合を作れなかったら、おそらく地球に生命は生まれていなかったでしょう。壊れにくいしっかりとした二重結合を作れるというのは超重要な性質です。

ケイ素なんかは二重結合を作ることができなくはないようですが、作るのが大変な上に結合が切れやすいのでダメです。ケイ素は炭素と同じく結合を4本持てるので、SFには地球外生命体としてケイ素化合物で身体が出来ている生物というのがよく登場します。でも、二重結合を持つことが難しいケイ素では、少なくとも地球の生物と同じような生物は作れないと思います。しかもケイ素原子は炭素原子の倍くらい重いです。なのでケイ素でできた宇宙人は、いたとしても地球人とは姿や生態が全然違うでしょう。もしかしたらそれが生物だと気づかないくらい姿や生態が全然違うかもしれません。

硫黄やリンに関しても、同じ元素で二重結合を持つ分子は無くはないのかもしれませんが、あったとしても壊れやすい分子だと思います。

炭素すげえな!

以上の3個の理由をすべて満たすから炭素は複雑な構造を作ることができ、炭素を含む複雑な物質が偶然地球上に誕生し、複雑な物質が偶然集合して細胞っぽいものになり、細胞っぽいものが偶然自分で自分の身体の成分を合成するようになり、終いには子孫を残すようになり、生命が誕生し、それが進化しておれたちみたいな現在の生物になり、ついでに我々ヒューマンが液晶とか有機ELとかプラスチックみたいな有機物を開発し、おれがこうしてキーボードをカタカタやって書いた記事が液晶か有機ELの光を通じてみなさんの目のビタミンAみたいな形の二重結合を持った有機分子に相互作用し、情報が脳に届けられているわけです。すごいことだと思いませんか。運命ですよね。こういう化学的な記事もちょいちょい書くつもりなので興味がある方はぜひ

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ここまで偶然が重なったのはすごいことですが、その偶然が起きることができたのも、炭素という元素が3つの特別な性質をきっちり満たしているためです。ちなみに実は3つだけじゃなくてもうちょっとたくさんあります。みなさんも毎日魚のコゲだけをバケツ1杯分モリモリ食べて、日々炭素に感謝を捧げましょう。元気モリモリ炭素パワー!

終わり。

せろりんでした。

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